SpecialVol.25

クリニックの上にある
フィットネスジム

〜医療と健康のために〜

聞き手・井上英樹(MONKEY WORKS)
写真・ヘルシアマガジン編集部

運動と健康。皆さんにとっても大きなテーマではないでしょうか? その二つを地域のために実践している方がいます。さなげクリニック(愛知県豊田市)の杉浦由規院長です。杉浦先生は循環器内科医として地域医療に携わりながら、エニタイムフィットネス豊田猿投店を運営しています。クリニックの2階にあるジムでは、通院ついでにトレーニングに励む方もいて、幅広い世代の方々が運動をしています。杉浦先生に、医療と健康についてお話を伺いました。

あらためて気付いた
運動習慣の大切さ

先生はなぜクリニックとフィットネスジムを運営しているのですか?

理由は二つあります。私の専門は心臓、血管の疾患を予防・治療することです。以前、患者さまのデータ解析をしている時、運動習慣の大切さにあらためて気が付きました。心筋梗塞などでクリニックに運ばれた患者さまがいるとします。その患者さまが社会復帰していく中で、もともと運動習慣のある方は予後のデータが良かったんです。このようなデータに触れるにつれ、私は通常の循環器内科の「その一歩前」のことをやってみたいと考えるようになりました。

もう一つは私の運動習慣です。私自身がエニタイムフィットネスに出合い、業務の合間の少しの時間でもしっかり運動をすることができるようになりました。24時間ジムを利用し、「いつでも」のメリットから大きな恩恵を受けたので、クリニックとフィットネスジムを運営するようになりました。

先生はどのようなトレーニングをなさっていますか?

業務の合間にクリニックの上にあるエニタイムフィットネスに行き、1時間ほどトレーニングをしています。週5回ほどですね。たいていは無酸素と有酸素運動を交えたメニューですが、筋疲労が残っている日は有酸素のみです。

自分を追い込んだ時の爽快感・疲労感が好きです。私はベンチプレスなどのフリーウエイトをやるのですが、どうしても上がらなかった重さが、続けていくうちに上がるようになる。これはうれしいですよね。「筋肉はうそをつかない」とよく言いますが、本当ですね(笑)。

通院されている患者さまがエニタイムに入会するという流れもあるのですか?

クリニックの受付などにエニタイムのご案内を置いています。患者さまの中には生活習慣病の方がいらっしゃって、皆さんなんとなく運動をした方が良いのは分かっていますが、なかなかできないという方も多い。豊田猿投店は、クリニックと連携したジムですので、患者さまへ「運動のきっかけ」を提供できたらと、入会をおすすめすることがあります。ジムはクリニックの上にありますので、入会された方は通院や近隣への買い物ついでにお立ち寄りいただいているようです。お話を伺うと、生活の一部にエニタイムを組み込めているようでうれしいですね。

さなげクリニックのオリジナルの特典で、豊田猿投店の会員の方は「メディカルチェック」が受けられるそうですね。

はい。「通常の健診は受けていただいている」というのが大前提の検診となりますが、無料でメディカルチェックを受けることができます。このメディカルチェックでは、職場の健診や特定健診などでは行わない検査項目を、無料で測定することができます(一部、有料の検査もあります)。

  1. 運動負荷心電図:安静時には見つけることのできない心電図の変化を測定。
  2. ABI(足関節上腕血圧比):動脈硬化の程度や血管年齢の測定。
  3. 頸動脈エコー:血管の狭さくを測定。
  4. InBody:部位別体脂肪率、部位別筋肉量、体成分分析などを測定。
  5. CTによる皮下脂肪、内臓脂肪の測定:CTスキャンで皮下脂肪、内臓脂肪面積を測定。
  6. ヘモグロビンA1c、コレステロール測定:糖尿病、脂質異常症の測定(別途有料500円)。
  7. NT-proBNP測定:心不全などの心疾患の可能性を測定(別途有料1,000円)。

楽しく運動をするには、自分自身の体について知ることが大切だと思います。少しでも安心してトレーニングをしていただけるよう、このサービスを考えました。生活習慣病のある方から「運動をしていいですか?」と質問されることがとても多いんです。運動をしたい気持ちはあっても、不安を感じておられる方がいます。定期的に体のチェックをし、ジムで運動をする際の参考にしていただけたらと思っています。目に見える筋肉の変化も重要ですが、数値が出るメディカルチェックやCTスキャンで視覚的に皮下脂肪を見ると、皆さんの運動のモチベーションになるのではないでしょうか。

積極的に運動が必要な世代は?

最も運動が必要な世代は?

健康面から考えますと、やはり50歳以上の方ではないでしょうか。診療で実感するのが、50代で「運動している人」と「していない人」の差です。運動している方は、いざ病気になった時、快復力の高い方が多いように思います。やはり、筋肉がしっかりしていて、運動能力、心肺能力も高いんですね。ぜひ、50代からの人生のためにも運動習慣を取り入れていただけたらと思います。

先生が運営するジムを訪れると、シニアの方たちが頑張っている印象を持ちました。

朝の時間帯もシニアの方が多いですね。雨の日でも毎朝いらっしゃる方もいます。もしかすると、他の店舗よりもシニアの方が少しだけ多いかもしれませんね。たまに80歳でも驚くほどお元気で、若々しく見える方がいらっしゃいますが、そういう方の多くは運動をなさっている。運動習慣によって、そんな元気な方々を増やせればいいなと思います。人生100年時代といわれているのに、健康寿命が延びないのでは困ります。もっと生活の中にフィットネスが定着するとうれしいですね。

クリニックとフィットネスジムを運営して思うことは?

エニタイムフィットネス豊田猿投店は、住宅街の中にあります。このジム自体が周辺地域の皆さんの生活の一部に組み込まれてきたなと実感することがあります。トレーニングの後、汗をかきながら診察に来てくれて、「今行ってきたよ!」なんてお声がけしてもらうことも増えてきました。生活の中にジムがある。そんな瞬間に触れた時、「やって良かったな!」と思いますね。

また、私たちの店舗はフレンドリーなスタッフに恵まれています。スタッフと会員さまが気さくに会話を楽しんでいる様子を見ると、とても良い場所になってきたなと思います。

シニアの方には「マシンの使い方が分からない」や「何をしていいか分からない」という不安もあろうかと思います。ですが、スタッフがいたらいろいろと教えて差し上げることができます。シニアの方は朝型が多いのですが、トレーニングに不安を感じている方には、「ぜひ、スタッフのいる時間帯に来てくださいね」とお伝えしています。

先生には理想の未来像、社会像がありますか?

2023年末に厚生労働省の専門家検討会が「健康づくりのために推奨される身体活動・運動の目安となるガイド(案)」をまとめました。子ども、成人、高齢者に分けてそれぞれに推奨する歩行や運動の具体的な内容を示しています。

そこでは、フィットネスマシンなどの筋力トレーニングを成人、高齢者ともに「週2~3回」を推奨していまして、日本でもジムが必要不可欠だと実感しました。この提案を実践していけば、確実に日本の運動人口は増えていくでしょう。今は、日本全体のフィットネス人口を増やしていく大切な時期ではないかなと思います。多くの人が運動習慣を持てば、全国民の健康につながっていくと考えています。高齢者も若い世代も一緒になって運動する。そして健康を維持し、楽しく元気に暮らしていく。そんな社会になるといいですね。