SpecialVol.18

“あるある探検隊”
レギュラーのおふたりに聞く

〜楽しい人生の歩き方〜
健康×お笑い=最高の人生
ウオーキング講座

「笑いは健康に良い」と聞いたことがある人は多いでしょう。この「笑い」を商品としているのが吉本興業です。数多くの芸人が所属しており、漫才からコント、中には筋肉を売りにする芸人もいます。エニタイムフィットネスの店舗に、吉本芸人のレギュラー・松本康太さん、西川晃啓さんが登場すると店舗内が沸きました。
ですが、おふたりの芸風をご存じの方なら「なぜ、エニタイムフィットネスに?」と思うかもしれません。実は彼らは介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を取得し、レクリエーション介護士2級の資格も取得した「介護芸人」でもあるのです。そして、最近力を入れているのが「健康ウオーキング」とのこと。そんなおふたりに健康×お笑いについてお伺いし、更に健康に歩く秘訣について尋ねました。

文・井上英樹(monkeyworks)
写真・高木あゆみ(はちどりphoto)
会場にレギュラーの松本さん、西川さんが登場すると小さなお子さんだけでなく、お父さんお母さんたちもわっと沸きます。軽快なトークの途中、西川さんが左手を上げ「ぐぅぅぅ~」と白目をむいて立ったまま気絶をすると、相方の松本さんが「に、西川君が気絶してもうた! こうなったらあるある探検隊を呼ばなあかん!ドゥドゥビドゥバドゥビ」と、歌い出します。ジムに集まった人たちも、「ハイハイハイハイハイ、あるある探検隊、あるある探検隊!」と一緒になって歌います。お二人は、この元ネタを利用した健康運動で会場を更に盛り上げていきます。「あるある探検隊」のリズムに乗って、大声で笑い、体を動かしていくとじんわりと汗をかくから不思議です。笑いと運動が融合した時間は、あっという間に過ぎていきました。

レギュラーのお二人は介護施設などで、利用者の皆さんと運動をしたりウオーキングの重要性を説いたりしているそうですね。

松本
レクリエーション介護士の資格を取ったことで、介護施設に行く仕事が増えました。現場で利用者さんと接する中、「歩くこと」の重要性に気がついたんです。歩かなくなると体力も衰えてくるし、中には認知症になる方もいるそうです。歩くとふくらはぎが動きますよね。ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれるくらい大切な場所です。足の下に下がった血液を上に運ぶ「筋ポンプ作用」という役目があるんですね。
西川
歩くってすごく健康に良いんやと知って、歩くことを調べてみたんです。そしたら、健康維持に良いことが分かったんですね。手軽なのでお年寄りも、忙しい人でもたくさんの人ができます。それで「健康ウオーキング指導士」の資格を取りました。

全世代が楽しくできる
ウオーキング

先ほどのイベントでは「あるある探検隊」のネタで皆さんと一緒になって体を動かしました。それだけで汗をかきました。歩くことは結構な運動量があるのですね。

松本
そうなんですよ。全世代が気軽に取り入れられる運動が「ウオーキング」ではないかと思いますね。だけど、人にはそれぞれの姿勢があります。例えばデスクワークの多い人は猫背気味の姿勢になっていることがあります。この姿勢で「たくさん歩かないと!」と、無理をしすぎると腰を痛めてしまうことがあります。
西川
ジムのトレーニングと同じですよね。間違えた姿勢でトレーニングをしていると、体を痛めてしまう場合があるでしょう。正しい歩き方をしないのに「1万歩も歩いた!」と喜んでいても、結果的に腰や肩を痛めるんですよね。逆に正しい姿勢で歩いていると、短い時間や距離でも効果があるんですよ。

何に気をつけたら良いですか?

松本
姿勢より先に気をつけていただきたいのが準備体操です。え、歩く前に?と驚く人もいるのですが、準備体操が大切なんです。特に足首や手首のストレッチが重要です。座って足首をぐるぐる回したり、手を組んで手首もぐるぐる回します。歩いている時につまずいたとします。その時、事前に準備体操をしていると反射的に手が出るんです。こういう準備で怪我も防ぐことができますね。
西川
あとは靴ですね。まず、履く時に踵(かかと)を軽く地面にトントンと。そうすることで、靴の後ろ側にあるカップに踵がホールドされます。その状態で靴紐をしっかり結びます。そうすると、靴の中で足が遊ばないので事故が防げます。
松本
準備体操でもアキレス腱を伸ばす際に勢いをつけ、バウンドさせながら伸ばす人がいますよね。あれも間違いなんです。例えば、運動をやり慣れていない人は、そうやって冬場にアキレス腱を伸ばすと痛めてしまうことがあります。ゴムと一緒で冬場は硬くなってしまっているんです。だから、伸ばす際にはじわ~っと伸ばしていくんです。前の足に体重をかければ伸びますので、無理にバウンドさせない。
西川
小学生の頃、そう習ったのに今では間違いなんですよね。めっちゃバウンドさせてたなあ(笑)。

ウオーキングは具体的に体のどこに良いのですか?

西川
歩くと気分が良くなってくるんですよ。それは脳内にセロトニンという神経伝達物質が分泌され、精神の安定や平常心を保つそうです。それに適度な有酸素運動ですから心肺機能の強化にもつながります。正しい姿勢でしたら筋肉が付きますし……。ウオーキングの良さを言い出したらキリがないですね。
松本
ぐっすり眠れますし、ご飯がおいしくなるんですよね。こんな話を聞いていると、歩きたくなるでしょう(笑)?だけど、初めから無理をしないでほしいですね。というのも、それまであまり歩いていなかった人は、「歩く体」になっていないんですね。急に1日1万歩なんてしんどいと思います。
西川
1万歩というと、…2時間くらいみっちり歩くわけですから。
松本
日々ウオーキングを重ねて、だんだん筋力を付けてもらって、より長い時間、遠くへ歩けるようにしてほしいですね。昔、僕は100キロ近く体重がありまして、駅の階段なんてもっての外だったんです。ウオーキングを始めて2年くらいたち、今では階段は全然平気で息切れもしません。かなり痩せましたね。

無理なく長距離を歩くには

初めはどれくらい歩くのが良いでしょう?

西川

皆さんのお手持ちのスマートフォンでは「1日どれくらい歩いたか」が分かります(iOS→ヘルスケア、Android→Google Fit)。そのデータを見てみると、たくさん歩いた日、全然歩いていない日が分かりますよね。

日によって歩数にはばらつきがあると思います。1週間分の歩数を合計して7で割り、1日平均の歩数が出してみてください。それを基準に、その歩数に1000歩程度増やすくらいからスタートするのが良いと思います。歩き慣れていない人は、筋肉が少ない状態なので無理をすると体を痛めます。毎日歩けば“貯筋”も増えていきますので、疲れにくい体になっていくはずです。

「今日は歩けなかったなあ」という日があっても気にしないでいいです。翌日、加算して歩けばいいわけですから。焦らないで!

松本
会社員の方だったら、会社の行き帰りを歩くというのがいいと思いますね。駅まで近ければ、1駅延ばして30~40分ほど歩く。疲れたら片道だけでいいんですよ。往復歩けば1日1万歩ほど歩く計算になります。余裕のある時は、「もう1駅歩いてみよう」なんていうのもいいですね。これをしばらく続けるだけで体が変わってくるんです。歩く体ができ上がってくると、2~3時間歩いても疲れない体になってきます。

ウオーキングの基本は
とにかく無理しない

ウオーキングはゆっくりでいいんですね。それに無理しないと。

松本
そう、ゆっくりでいいんです。それを1年、2年と続けていったら、「あれ、長時間歩いても足が全く疲れないな」とか「息切れしないな」とか。すると、歩きたくなってきます。これ、ジムでの筋トレにどこか似ているんです。ジムに通う人は「筋トレしたいな」「筋肉付けたいな」って思って、ジムに行きたくなるじゃないですか。ウオーキングも同じ。しばらく歩いていないと、なんかムズムズするんです。ああ、歩きたい!って(笑)。
西川
松本君は時間ができると、すぐに歩きに行くんですよ。相方が健康になるのはうれしいですけど、顔がシャープになりすぎて、お客さんが心配する。劇場でネタをやっているのに「松本君、大丈夫かな?」って不安になってる。体重が減るのは大いに結構ですけど、笑いの量も減るのは困る(笑)。
松本
『ビルマの竪琴』の水島上等兵みたいになってる。だけど、僕の外面を見ているお客さんは、僕の内面の健康面は見ていないからね(笑)。

街を仲間と
楽しくウオーキング

どういう場所を歩くのがいいですか?

松本
もちろん、エニタイムみたいなフィットネスクラブは、快適に歩ける環境が整っているので最高です。でも、それ以外だったら、僕のおすすめはシティウオークです。街中を歩くのは安全なんです。例えば、真夏でも熱中症になりそうになったらコンビニに入れば涼めるし、飲み物を購入して水分補給もできます。トイレもあるし、休憩だってできますよね。そういうインフラが整っているのが街中なんです。
西川
ほんと、気楽に歩くのが良いんです。普段、電車やタクシーに乗っている距離を「今日は歩いてみようか」でもいい。電車賃もタクシー代も浮きますし。それが結局、自分への投資になっている。厚生労働省の試算なのですが、歩くことにより生活習慣病にかかりにくくなり、1日1万歩のウオーキングで1日14円の医療費節約になるそうです。つまり、1週間で98円も!
松本

歩くだけでポイ活になっているという(笑)。実際アプリでも、歩くだけでポイントが貯まるというのもあります。いろいろ調べて、スマホにウオーキングアプリを入れると楽しく歩けると思います。

ただ注意してもらいたいのが、誰にでも「どんどん歩いて!」とは言えないんですね。例えば、年配の方で、入院後なんかは要注意です。一度歩かなくなると、ものすごく筋力が落ちてしまうんです。そういう時は、家の周りを散歩して、足の筋力を戻していく必要があります。周りが「歩いた方が良いから」と無理矢理歩かせるのもダメなんです。

筋力が落ちている上に、ご高齢の方は骨も脆くなっている場合がありますので、転んだ時に骨折したりしてしまいます。それこそ、寝たきり生活になってしまいますからね。だから、本当に深刻な場合は無理に歩くのではなく、理学療法士に筋力アップの方法を教えてもらいながら、徐々に筋力を付けていく方がいいと思います。僕らも「歩け歩け」なんて言わないですね。無理したらいけません。やっぱり、なんでも楽しくやっていかないと。

西川
そうそう。どんなことも楽しく、笑いながらというのが大事ですからね。
松本
ほんとに、そうやね。風邪をひいて家で寝転がって、バラエティーを見て笑っていたら元気になった、とかよく聞くんです。僕らは筋トレを教えることはできないですけど、心のセラピー的に心の筋肉を解きほぐすことはできるんで。
西川
なんでも一人でストイックに続けるって、難しいじゃないですか。もしかしたら、ウオーキングも一人で黙々とやり続けるのはしんどいかもね。だけど、仲間とわいわいしながらやると楽しくできますよね。家族や友人と楽しく喋りながら、ウオーキングするなんてのも良いですよね。ぜひ、皆さんもウオーキングを始めてください。そして、ご家族や友人たちと話をしながら、わいわい楽しく歩いてほしいですね。
Profile
レギュラー
1998年結成(NSC大阪校21期生)。「あるある探検隊」で人気のコンビ。「ABCお笑い新人グランプリ」第23回(2002)最優秀新人賞、「NHK上方漫才コンテスト」第35回(2005)最優秀賞。健康ウオーキング指導士(2020年)取得、レクリエーション介護士1級(2021年)取得。

松本康太さん

京都出身
趣味:サッカー、映画・芝居鑑賞、釣り

西川晃啓さん

京都出身
趣味:サッカー観戦、野球、バスケ、読書、ボッチャ