仕事柄、旅が多い。旅先でベッドや枕の硬さなど気にならないのかと聞かれることもあるけれど、気になったことはない。いつだってすぐに眠れる。自分の数少ない長所を上げるとすれば、この寝付きの良さだ。横になれば1分もたたずに寝てしまう。どうやら考え事をしても、自動的にまぶたが閉じ、思考がシャットダウンするようにできているようだ。
しかし、僕も人並みに寝付きが悪い時がある。それは熱帯夜だ。体にまとわりつくような湿度、扇風機ではいかんともしがたい気温。そんな時は、何度か寝返りを打っては、どうにかして夢の入り口を見つけようとする。クーラーを効かせればいいとお思いだろうが、僕は冷えに弱く、クーラーの効いた部屋で寝ると体調が悪くなってしまう。
日本の暑い夏をなんとか快適に過ごしたいという知恵だろう。冷たい枕、冷感布団など、世の中にはたくさんの熱帯夜対策グッズが売っている。ネット通販で熟睡を追求した『ハニカムケット』というタオルケットが目についた。タオル地の凹凸状のハニカム織りが、汗と湿気を逃がすらしい。ちなみにハニカム(honey comb)とは「ミツバチの櫛(=ハチの巣)」という意味だという。
梅雨が明け梅雨が明け、本格的な夏がやってきた頃、我が家に『ハニカムケット』が届いた。ブルーをベースカラーとした、とても上品なタオルケットだった。タオルの名産地として知られる、大阪・泉州地域の職人たちが、糸染めから縫製まで、すべて手掛けているという説明があった。触った瞬間、「あ、眠れるヤツだ」と直感した。さらっとした肌触りがとてもいい。ハニカム構造は立体的なので、人の肌に触れる面積が小さい。だから、汗が染みこむ前に乾くのだろう。寝室で荷ほどきをしていると、背後に視線を感じた。うちの猫がじっとタオルケットを見ていた。
その日の夜。タオルケットに身を包み、「なんだか、いいな……」と、思った所までは覚えている。明け方に目が覚めた。これでは寝具のレビューにならないと思うのだけど、本当なのだから仕方がない。
いくら熱帯夜でも明け方は少し冷え込むことがある。『ハニカムケット』がいいのは、織りがしっかりしているため、タオル地にある程度の重さがあり、自然と体にフィットする。ハニカム構造に空気が貯まることで体温が冷えすぎることがない。それでいて体温がこもることもない。うまく抜けているのだろう。上質の素材の服に身を包むと、暑さも寒さも感じない「フラットな状態」になることがある。まさにそんな感じだ。
それからは、『ハニカムケット』が僕の強い味方になった。熱帯夜の救世主だ。ただ、ひとつ困ったことがある。猫もまた『ハニカムケット』の肌触りを気に入ってしまい、僕がいないときに先に寝てしまうのだ。猫の眠りを邪魔しないよう、そっと『ハニカムケット』に体をすべり込ませる。猫が邪魔だなと思いつつ、目をつむれば心地よい眠りに落ちる。
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