残暑を乗り切る!
魔法のスパイス
スパイスを上手に使って
おいしく健康に
香りが命!
薬としても使われてきたスパイス
スパイスというと「カレー」を思い出す人も多いと思いますが、スパイスは“辛いもの・刺激的なもの” だけではありません。スパイスには3つの作用があり、香り付け・色付け・辛み付けです。中でも、スパイスの命は“香り”、風味であるといえます。辛さの成分を持っているスパイスは全体の1割にも満たないのです。
スパイスは、脂肪を燃やし、自律神経に作用するものが多く、エネルギー代謝を高めることが分かってきています。また、食品の保存性を高めるだけでなく、塩や砂糖を控えた料理の味の不足を補うという働きを持っているので、健康のために塩分や糖分を控えている人も、スパイスを使うことで食事がよりおいしくいただけますよ。
さらに、スパイスは香りや味を楽しむだけでなく、古くから薬として使われてきました。インドのアーユルヴェーダ、中国の中医薬学や漢方、ギリシャのメディカルハーブなどでは、スパイスが体のバランスを整え、健康維持の効果があると考えられてきました。上手に使えば健康にも良いと考えられています。
スパイスの使い方のコツと
保存方法
スパイスの使い方のコツは、大胆にチャレンジ!でも使用する量は控えめに!!です。スパイスは入れ過ぎると後戻りできないので、確認しながら入れましょう。スパイス初心者がやりがちな失敗は “入れ過ぎ”です。スパイスは少量でも効果があるので、むやみに入れると薬臭くなって、味の調和が取れなくなってしまいます。始めは「こんなに少なくていいの?」と感じる程度で十分です。少しずつ増やすようにしていくと、スパイスの上手な使い手になれますよ。
スパイスは長期保存できる食品だと思われがちですが、実はとってもデリケート。容器のふたをしっかりと閉めて、冷暗所で保存してください。乾燥スパイスの命は香りと色。その大敵は「光」「熱」「湿気」です。くれぐれも、湿気と熱がこもるコンロ近くのつり戸棚などに置かないようにしましょう。また、冷蔵庫や冷凍庫に入れると、取り出した時に、温度差により瓶に水滴が付く可能性があるのでおすすめしません。常温管理が基本ですが、どうしても冷蔵庫に入れる場合は使用する直前に取り出し、使ったらすぐ戻すことが重要です。
中東の魔法のふりかけ
「夏デュカ」
今回は、中東生まれのスパイス調味料「デュカ(ダッカ)」をご紹介いたします。エジプトを中心に北アフリカ地域で人気のミックススパイスで、“中東のふりかけ”ともいわれています。スパイスやナッツなどをブレンドした華やかな香りと、粗くつぶした食感が特徴で、エスニックな味わいを楽しめるのが魅力です。いつもの料理に一振りするだけで、まとまりのあるコクと豊かな風味、ザクザクした食感、料理の味わいをワンランク引き上げる、魔法の調味料です。今回作るのは、さらに夏のスパイスとしては欠かせないピリ辛感のある唐辛子を加えた「夏デュカ」です。
また「夏デュカ」を使った「鶏肉と蒸し夏野菜のデュカかけ」と「桃のカプレーゼ」の2つのレシピもご紹介します。
夏バテ予防!
夏に取ると健康効果が高い
スパイス調味料「デュカ」
使用するスパイスとナッツ
唐辛子(チリペッパー)
唐辛子の辛味成分はカプサイシン。辛みだけではなく独特の香りがあり、料理のうまみを増す効果も大きいスパイスです。発汗作用があり、食べると暑く感じますが、結果的には汗をかき体温を下げてくれます。辛いスパイスを食べると、交感神経が優位になり、皮膚温度が上昇します。汗をかくと一時的に代謝が上がり、汗により水分が蒸発する時に体の熱を奪い、体温を下げて涼しく感じます。また、唐辛子には、肥満防止効果、食欲増進効果、冷え症の防止などの効果が期待されます。
クミンシード
カレーを思わせるエスニックな芳香のあるスパイス。個性的な強い香りとピリッとした辛み、かすかな苦みが感じられるインド料理には欠かせないスパイスです。消化を助けて胃腸内にガスがたまるのを防ぐ作用、肝機能を高める作用があります。また、生活習慣病の改善に役立つとされ、抗酸化作用のあるビタミンE、美肌に効果があるビタミンCなど、アンチエイジング効果も期待されています。そのまま食べても爽やかな芳香が感じられるので、マウスウォッシュの代わりにも。
コリアンダーシード
コリアンダーシードはパクチー(香菜)の完熟した種子です。消化不良、健胃などの薬用として使われ、片頭痛を和らげる効果やデトックス作用があるとされています。レモンのような、爽やかでほのかにスパイシーな香りがあり、口当たりの良い甘みと、かすかな辛みが感じられます。複数のスパイスをひとつの香りにまとめるスパイスともいわれます。歴史の古いスパイスで、紀元前1500年代の医学書にも料理法が記載されています。
ナッツ類
デュカにはお好みのナッツを刻んで入れます。ナッツには良質な脂質、抗酸化作用、ビタミン、ミネラルなどの栄養成分が含まれ、健康や美容の維持におすすめの食材です。ナッツ類は豊富な食物繊維により、少量でも満腹感が得られ、腹持ちが良いというメリットがありますので、そのまま食べても良いですね。1日に食べる目安量は片手に乗せられるくらいの約25gまでがベストです。
夏デュカレシピ
【材料】
- ナッツ類
(クルミ、アーモンド、
ヘーゼルナッツなど) - 30g
- クミンシード
- 小さじ2
- コリアンダーシード
- 小さじ1
- 白炒りゴマ
- 小さじ2
- レッドペッパー(一味唐辛子)
- 小さじ1
- 塩
- 小さじ1/4
【作り方】
ナッツ類は粗く刻む。コリアンダーシードは瓶の底などでつぶす。
※スパイス類の香りがなくなっている時は、弱火でゆっくり乾煎りすると香りが戻ります。
ボウルに、①と残りの材料を加えて、よく混ぜ合わせる。
※湿気に弱いので、乾燥剤と一緒に冷暗所に保存します。
※ナッツ類は、食塩や油が不使用のものがおすすめです。ナッツは酸化しやすいので、早めに食べましょう。
※レッドペッパーと塩はお好みで量を調整してください。
【食べ方】
デュカはそのまま食卓に出して、オリーブオイルと一緒にバゲットや食パンに付けて食べるのが一般的ですが、料理にも活用できます。サラダやパスタ、納豆や冷ややっこ、スープやチーズなどにそのままトッピングしたり、野菜炒めや魚や肉のグリル、チャーハンなどにアクセントとして加えたり、ハンバーグにひき肉と一緒に入れたり、揚げ物の衣に加えて揚げたりできます。出来上がった料理にそのまま加えて混ぜて食べてもいいですし、調理の仕上がり時に加えて、さっと全体を混ぜ合わせれば出来上がります。スパイス感とザクザク感が、いつもと違う斬新な味わいになります。
お酒のお供に、ウオッシュチーズとよく合います。お好みで、山椒、七味唐辛子、キャラウェイシードなど、お好きなスパイス類を加えてアレンジを楽しんでください。デュカと相性抜群の料理もご紹介します。デュカで残暑を乗り切ってください!
夏デュカを楽しむレシピ①
鶏肉と蒸し夏野菜のデュカかけ
鶏肉と夏野菜を組み合わせた夏バテ予防レシピです。
鶏むね肉は油を使わず蒸すことで、低カロリー高たんぱくなメニューになります。旬のカラフルでジューシーな夏野菜には、食欲増進や夏のダメージを回復する力があると言われています。ゴーヤーはストレスや疲労を回復する働きがあるビタミンCが豊富。ビタミンCは加熱しても壊れにくく、体のむくみにも効果的です。緑黄色野菜の代表野菜であるカボチャはは、βカロテン、ビタミンC、若返りのビタミンE、疲労回復のビタミンBが豊富。皮にも食物繊維とβカロテンが豊富なので積極的に食べましょう。トマトは水分が多くミネラルも豊富。赤い色「リコピン」は、夏バテや紫外線から体を守ってくれます。ミニトマトの方が、栄養価が高いと言われています。夏野菜はオイルと相性が良いので、一緒に取りましょう。
【材料】(2人分)
- 鶏むね肉
- 1枚(300g)
- おろし生姜
- 小さじ1
- 酒
- 大さじ1
- MCTオイル
- 適量
- デュカ
- 適量
- <夏野菜>
ゴーヤ
オクラ
カボチャ
ミニトマト - 1/3本
4本
1/8個(200g)
4個
【作り方】
鶏むね肉は一口大に切っておろし生姜をもみ込む。夏野菜は食べやすい大きさに切る。
フライパンに①を並べ入れて酒を振り入れる。ふたをして弱中火で5~8分くらい、鶏肉に火が入るまで蒸す。
※途中、焦げ付きそうなら、水を少量足してください。
器に盛り、MCTオイルとデュカをかける。
※MCTオイルは生食のみ、1人1日小さじ1くらいが目安量。
※鶏肉の皮は、お好みで外してもOK。
夏デュカを楽しむレシピ②
桃のカプレーゼ
桃のとろけるような果肉には、ペクチンなど食物繊維がたくさん含まれています。水溶性食物繊維は整腸作用があるので、便秘予防、美肌効果もあり、レモン汁などと合わせると効果アップ。濃厚な甘みは体内ですぐにエネルギー源になります。疲労回復効果のあるクエン酸も含まれています。旬の桃とモッツァレラチーズにデュカとレモン汁、オリーブオイルなどをかけていただく、エスニックなデザートです。
【材料】(2人分)
- 桃
- 1個
- モッツァレラチーズ
- 100g
- チャービル
- 適量
- デュカ
- 適量
【作り方】
皮をむいて種を取った桃とモッツァレラチーズは食べやすい大きさに切る。
①を器に並べ入れ、チャービルの葉とデュカをトッピングする。
※桃の代わりにキウイフルーツやメロン、ナシなどの季節のフルーツでもOK。
※桃は切ってから、レモン汁をかけておくと変色止めになります。
※お好みでオリーブオイルをかけても。
※チャービルの代わりにバジルの葉をトッピングしても。
MICHIKO(みちこ)
食養生士・料理研究家・調味料研究家・調理師。調味料ソムリエプロ・野菜ソムリエプロ・カレーマイスター。食と健康と美をテーマに、講演・セミナーを行い、料理レシピ・調味料紹介や批評、開発、コラムの執筆などを手がけ、テレビの出演・雑誌の掲載多数で著書も多い。生活習慣病などの生活や食事アドバイスをしている。エイ出版『和食の基本』、中経出版『調味料ノート』、ムック本に腎機能・肝機能・心臓強化、尿漏れ等の対策レシピを多数紹介。日本野菜ソムリエ協会 講師。調味料選手権 審査委員長。食養生教室「美楽流®︎」in豊洲 主宰。
http://www.cookmiracle.com/
記録的な猛暑が続いているこの夏。夏バテや食欲不振に悩まされている人もいるのでは?そんな時はスパイスの力を借りましょう。食材や料理に香りや色を付けたり、味に深みを加えたりするのに用いるスパイス。いつものおなじみのメニューもスパイスを使えば、たちまちおいしく変身します。料理研究家・調味料研究家のMICHIKOさんに残暑を乗り切るための万能スパイスを教えていただきました。簡単、おいしいスパイス料理のレシピもご紹介します!