SpecialVol.19

食べ物の廃棄を減らして、
必要な人に届ける

フードドライブが変える地域社会
―神戸市の取り組み―

文・ヘルシアマガジン編集部

食品ロスのことを知っていますか?食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されている食品のことです。神戸市では食品ロス削減に取り組みやすい仕組みづくりと、啓発キャンペーンやフードドライブの実施を推進する「KOBE ストップ the 食品ロス」運動を行っています。取り組みの一つである「フードドライブ」は、家庭で余っている食品を地域のイベントや協力店舗に持ち寄っていただき、それを必要としている福祉団体・施設等に寄付する活動です。神戸市内のエニタイムフィットネス店舗も参加している「フードドライブ」について紹介します。

きっかけは
市民のアイデア

日本の年間の食品ロスは522万トン(農林水産省及び環境省「令和2年度推計値」)。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍にも相当します。日本の食品ロスだけで、世界中の飢餓を救える計算になります。

神戸市の担当者である清水さんにお話を伺いました。
「この取り組みが始まったきっかけは2017年2月、食品ロス削減に向けて市民の声を聞くワークショップを開催したところ、フードドライブ活動の提案があったことです。」

清水さんの部署は環境局です。実は、食品ロス削減はごみの減量活動の一環として始まったそうです。食べられる食品を寄付していただくと、ごみにならないだけでなく、それを有効活用できるというところが重要なポイントです。


神戸市環境局 清水さん

市内のスーパーマーケット
からスタート

2017年6月、モデル店舗での実施を経て、フードドライブ活動は神戸市内のスーパーマーケットでスタートしました。ダイエー、コープこうべ、イオン、光洋などのスーパーマーケットと連携し、店舗にスペースを借り、のぼりと回収ボックスを置き、市民に店舗を利用するついでに食品の寄付をしてもらう、という仕組みです。小さなスペースの提供と最低限の設備での活動は、店舗にとって負担が少なく、現在では約100店舗が参加しているそうです。市民にとっても、毎日行く近所のスーパーに持って行くだけならフードドライブ活動に参加しやすいですね。

気づきの場所の広がり

エニタイムフィットネスでの食品寄付受け付けは、2022年7月に垂水店でスタートし、同年10月からは神戸市内の計14店舗で実施しています。食品を扱う小売店ではないエニタイムフィットネスが、この活動に参加したきっかけは「おてらおやつクラブ」の活動です。清水さんが奈良のおてらおやつクラブの梱包作業を見学に行った際、たまたまエニタイムフィットネスの担当者も参加していて、そこでの出会いをきっかけに、エニタイムフィットネスも神戸市のフードドライブの取り組みに参加することになりました。

「普段の生活の中で、食品ロスを考えるきっかけはなかなかないと思いますが、寄付できる場所が増えるということは、気づきの場所が増えるということだと思います。今までスーパーマーケットという食品関係の施設を中心にやっていましたが、エニタイムフィットネスさんのような健康関連企業や、運動に関わる施設が参加してくださることで気づきの場所が広がり、それまでとは違う層にもアピールすることができるようになったと考えています。」
今後も寄付できる場所の拡大、市民が気づける場所の拡大を継続していきたいそうです。

顔が見える支援

全国には約200のフードバンク団体があり、企業からの寄付やフードドライブで集まった食品を集約し、こども食堂や福祉施設に配分しています。神戸市では「フードバンク関西」が各店舗に食品を受け取りに行ったり、各店舗から送られてくる食品を配分したりしていて、それに加えて2021年から近隣の福祉施設や支援団体が、各店舗に直接食品を受け取りに行くようになったそうです。

神戸市HPより

各店舗と支援団体が一対一の関係になっていくことで、お互いに顔が見える支援になり、近くにあるこども食堂や福祉施設の存在が可視化され、市民にとって食品ロスや貧困が身近な問題として自分事化していくことが期待できます。

フードドライブを
きっかけに地域と連携

エニタイムフィットネス妙法寺店の統轄マネージャー 室木勇二さんにお話を伺いました。

「缶詰やレトルト食品の他に、文房具やガムテープなどの日用品も受け付けています。会員さまからは、家で余ってしまった食品や使わないものを出すことで社会に貢献できてうれしいです、というお声をいただいています。現場のスタッフからも、市の取り組みに参加することで地域の方々との連携が図れるので、やりがいが感じられるという感想が出てきています。」


エニタイムフィットネス妙法寺店
統轄マネージャー 室木勇二さん

フードドライブをきっかけに、会員さまとのコミュニケーションの時間も増えたそうです。寄付先のこども食堂や、地域の方々ともこの取り組みをきっかけにつながったので、今後はフードドライブ以外の取り組みでも、連携していきたいそうです。

地域全体の食品ロスに
貢献したい

エニタイムフィットネス学園南店では、回収ボックスを設置するとすぐ満杯になったそうです。
マネージャー 城井愼平さんは、
「フードドライブの取り組みはダイエーなどのスーパーでもやっていますし、テレビでも紹介されていたため会員さまもよくご存じだったようで、店舗にボックスを置いたら1週間ほどで満杯になりました。量が多かったので、引き取りに来られた支援団体の方も驚いていたくらいです。皆さんに活動をよく理解していただけていると感じました。」


エニタイムフィットネス学園南店
マネージャー 城井愼平さん

レトルト食品やパスタ、乾麺、缶詰の他に、全国のお土産も多かったそうです。
「お土産は、寄付するためにわざわざ買ってきてくださったのかもしれないです。この地域は大型の集合住宅や分譲住宅が多く、家族で暮らしている方が多いので、余ってしまう食品も多いのではないかと思います。今後も地域全体の食品ロス削減に、貢献したいと考えています。」

コロナ禍で困窮する
家庭が増加

エニタイムフィットネス妙法寺店の寄付先である支援団体「こども食堂キズナ」は、毎月第1、第3土曜日に清風公民館別館でこども食堂を開いています。1階にキッチン付きの食堂があり、子どもたちは2階の学習室で自習したり遊んだりして過ごして、食事は11時から13時半の間いつでも食べられるそうです。メニューは主にカレーライス。

代表の行野秀樹さんは、もともとホームレスの支援活動をされていたそうですが、地域の方からコロナ禍で生活が苦しいという話を聞き、こども食堂も始めたそうです。子どもたちよりも、住宅ローンなどを抱えた親御さんたちが、こども食堂ができてとても喜んでくださっているとか。


「こども食堂キズナ」 代表 行野秀樹さん

「これまでは助成金だけでは足りず、自分でアルバイトなどをして補填していたので、フードドライブで食材を寄付していただけるようになって大変ありがたいです。」
今後はSNSなども活用して、こども食堂の情報がサポートを必要とする子どもたちに届くようにしたいそうです。

子どもたちにものを
大切にすることを伝えたい

エニタイムフィットネス学園南店の寄付先である「みんなのごはん」の代表小野田悦子さんは、3カ所のこども食堂を運営されています。

「2016年から学習サポートとバイキング形式のこども食堂をやっていたのですが、コロナで全てできなくなってしまいました。2020年2月には学校が休校になったので、お弁当を作って配布することにしました。神戸市の場合は6月の中旬まで休校していたので、休校期間は日曜日以外、毎日お弁当を作りました」。


「みんなのごはん」 代表 小野田悦子さん

「3カ所で週4回、こども食堂を実施しています。学校給食がない春休み、夏休み、冬休み期間も実施していて、ほぼ毎日どこかでやっているので、食材をご提供いただけるのはすごくありがたいですね。私の団体は、学園南店さんと大蔵谷店さんからご提供いただいていますが、挨拶に行かせてもらったらスタッフの皆さんがとても親切だし、すごく熱心に関わってくださっていました。これを機に子どもたちにも、お弁当を作ってくださる方、関わってくださる方の思いを伝えて、ものを大事にすることを伝えていきたいと思っています。」

フードドライブを通じて
社会の課題を
知るきっかけに

子どもたちが社会の仕組みを知る機会を提供して、将来大人になった時に人に対する思いやりを持って、次の世代にも同じようにしていって欲しい、と小野田さんは言います。フードドライブをきっかけに、社会の課題を知り、一人ひとりが無理なくできることをすることで、少しずつ地域や社会が変わっていく。そういう良い循環が生まれていくといいですね。

フードドライブは、家庭で食べ切れない食品を無駄にせず社会貢献につなげる、誰でも参加できる運動です。参加しやすくするためには、食品を持ち込める場所を増やすこと。普段通うフィットネスジムにもフードステーションがあったらいいですよね!神戸市のような取り組みが、将来全国に広がっていくことを期待します。皆さんも、お住まいの地域でフードドライブ活動に参加してみてください。

エニタイムフィットネス
妙法寺店

https://www.anytimefitness.co.jp/myohoji/

エニタイムフィットネス
学園南店

https://www.anytimefitness.co.jp/gakuenminami/