運動は健康のため
みなさんはどんな目的でトレーニングをしていますか?
わたしは減量と、筋肉減少に歯止めをかけることが目的です。ほうっておくと脂肪は溜まる一方、筋肉は減る一方というお年頃なので、なんとかそこにあらがいたいわけです。
トレーニングをしている方の多くは、わたしのように減量や、スタイル維持、健康維持が目的なのではないでしょうか。もちろん、アスリートや、筋肥大が目的という本気の方もいらっしゃるでしょうが、いずれにせよ、自分の体の状態をよりよくするために運動をしている方がほとんどだと思います。運動は体の健康のため、というのが一般的な考え方でしょう。
そんな常識を覆すのがこの本です。
運動で脳を鍛える?!
運動で鍛えられるのは筋肉と相場が決まっています。もちろん心肺機能も高まるでしょう。血流もよくなりそうです。でも脳が鍛えられるってどういうこと?
冒頭、アメリカ・イリノイ州ネーパーヴィル203学区で始まったある取り組みが紹介されます。ある高校で朝の授業前に運動する「0時限体育」を導入したところ、生徒の成績が目覚ましく向上したというのです。しかも、0時限体育の直後に受けた1時間目の教科の成績が顕著に上昇したのだそうです。
いったいどうして?
脳と運動の驚きの関係については本書をお読みいただくとして、ヒントは原題『SPARK: The Revolutionary New Science of Exercise and the Brain』にあります。SPARKは脳の神経細胞(ニューロン)が電気信号を伝える瞬間を表現しているのでしょう。このタイトルには「脳を発火(スパーク)させて生気(スパーク)を取り戻そう」という意味が込められています。
近年の研究によって、運動が生物学的変化を引き起こし、脳のニューロンを結び付けることがわかってきました。脳が学習するには、ニューロンの新しい結びつきがつくられなければならない、逆に言えば、脳は新しい結びつきがつくれるからこそ、変化に対応できるのですが、ニューロンの新しい結びつきには体を動かすことが大きく関与しています。
運動の第一の目的は、
脳を育ててよい状態に保つこと
精神科の医師として多くの患者の治療にあたってきた著者のレイティ博士は、体を動かさなくなっている現代の生活が脳にもたらす深刻な悪影響に危機感を抱き、「運動が脳のはたらきをどれほど向上させるかを多くの人が知り、それをモチベーションとして積極的に運動を生活に取り入れるようになること」を切望して本書を執筆したそうです。レイティ博士は「運動の第一の目的は、脳を育ててよい状態に保つことにある」とまで言い切っています。
人間の脳が発達したのは、厳しい環境で獲物を追い、巧みに捕らえ、生き延びていくためだった、だからその活動をやめてしまうと、10万年以上にわたって調整されてきたデリケートな生物学的バランスを壊すことになる、というのがレイティ博士の主張です。
本書には、運動によって、うつやストレス、不安症、更年期障害といった症状が改善したレイティ博士の患者さんたちの事例が紹介されています。
薬にたよるのではなく、運動によって脳の機能が向上し、体の健康だけでなく、心の健康も取り戻せることを紹介した本書は、多くの人の希望となり、2008年に原書が刊行されて以来ロングセラーとなっています。
運動がもたらす脳への効果について知ることで、明日からまたトレーニングを続ける意欲が湧くこと間違いなし。すべての人類におすすめです。